重力に戯れる愉しみ

最近はフリークライミングばっかり。

RSS (2.0) Feed

御嶽山 尺ナンゾ谷 2011年4月10日

今回は寸前までどこに行こうか迷っていました。

もう4月に入っていることだし、標高の高い所も良さそう。そんなわけで、ここしばらくご無沙汰だった御嶽山へ食指が動きました。

御嶽山を滑るのはちょうど4年振り。今までスキー場からアプローチしたルートしか行ったことがなかったんですが、今回はなんとなく前からマニアックそうなルートだなあ…と興味があった、尺ナンゾ谷に初めて行ってみました。

GPS Log

地理院地図をポップアップ表示
(赤: シール歩行、青: スキー滑走)

記録

日付2011年4月10日(日)
天気晴れ
ルート
  • 椹谷林道・駐車地点 1700m 5:56
  • 兵衛谷渡渉 1675m 6:55
  • 上俵山 2076m 8:30
  • 尺ナンゾ谷出合の滝 2050m 9:35
  • 剣ヶ峰の西側のピーク 3040m 13:58/14:25
  • 尺ナンゾ谷出合の滝 2050m 15:26
  • 上俵山トラバース 2070m 16:23
  • 兵衛谷渡渉 1660m 17:17
  • 椹谷林道・駐車地点 1700m 18:14

雑記

いやはや、とにかく今回は登山口に到達するだけで疲れちゃいました。国道 41 号線からの県道は細くクネクネで運転に気を遣うし、県道の途中では何か事件でもあったらしく、検問が張られていて個人情報を根掘り葉掘り訊かれるし。

濁河温泉にはやっと 1 時過ぎに到着。過去の記録を見ると、市営駐車場に停める例が多いようですが、少年自然の家の手前で左に分岐する林道(地形図には未記載)を偵察してみると、すっかり除雪されていました。兵衛谷の橋(建設中)の手前の林道上にちょうど良い駐車スペースがあったので、そこで夜を明かすことに。これで少しアプローチを短くできました。

本当は早めに出発したかったのですが、渡渉は明るくなってからにしたい気もあったので、5 時起床で 6 時出発としました。支度をしていると少年自然の家の方から単独登山者がやって来ました。少しお話しした後、私も出発。

林道はすぐに下り坂になり、ちょっと進むと建設中の橋に到着。

椹谷橋

建設中の椹谷橋

あわよくば橋を渡って渡渉を回避できるかたなと期待していたのですが、橋への取り付き部分の道が全然できていなくて無理でした。ちなみに、この橋、椹谷橋というそうで、2012 年度に舗装まで含めて完成予定とのこと。

というわけで、橋の袂からスキーを履き、兵衛谷の右岸沿いにシール歩行とします。まず最初の小さな沢筋は、倒木が横たわっていたので、その上を楽に渡れました。

次に兵衛谷を渡ることになるのですが…水量が多くて難儀しそう。飛び石伝いに上手く渡ろうと試みるも…ブーツがドボンと水没…。あーあ、やっちゃった。一回ドボンと浸かると後は開き直ってしまうもので、ええい!ままよ、とばかりに沢をガシガシ渡ってしまいました。まだ出発してすぐなのに、ブーツの中は完全浸水状態になっちゃいました。濡れたまま歩くとなると、マズいことになるなあ…という予感は後々的中することに。出発してからここまで、ちょうど 1 時間ほどでした。

対岸に渡ってからは、樹林帯の急斜面を一気に登り上げます。この後は数日前のトレースがバッチリ付いていました。尾根に乗り上がると、しばらくは緩やかな登りが続きます。どこが山頂か判然としない上俵山を通過して、最低鞍部までやって来ると、ようやく御嶽山の姿がはっきり見えるように。

最低鞍部から兵衛谷を見下ろす

最低鞍部から兵衛谷を見下ろす

最低鞍部からは兵衛谷まで、なるべく斜度が緩い斜面を選んで滑り込みました。

やっとこれから本編の始まりってわけですが、ここまで長かった。兵衛谷の底で初めての長い休憩としました。ついでに濡れた靴下を絞って少しでも乾かそうとしてみたり。しかし悲しいかな、さきほどの嫌な予感どおり、この時点ではすでに足裏に靴擦れができていました…。

平坦な兵衛谷を進むと、すぐに尺ナンゾ谷の出合に到着。

左側の滝の右岸を高巻く

左側の滝の右岸を高巻く

先行トレースは右側の谷に入っていますが、私は過去の記録どおりに左側の凍結した滝の右岸(登路では左側)を高巻きました。

しばらくは密林とでも言っていいほどの樹林帯の中でした。適当な場所で樹林帯から脱出し、尺ナンゾ谷の細い沢筋に滑り込みました。後は単純に高みを目指して登るだけ。

昼が近づき太陽が高くなると、めちゃくちゃ熱くなってきました。日差しを避けるために、沢筋から離れて樹林の下をハイクアップしました。

振り返れば白山が

振り返れば白山が

いよいよ森林限界を超えると逃げ場所もなくなり、カーっと太陽が照りつけて暑いこと暑いこと。たまらずヤッケだけじゃなく、防寒インナーも脱いでしまいました。

右側の継母岳を横目に見つつ、真正面には雄大な御嶽山の姿がいよいよ迫ってきます。

摩利支天山、火口縁のピーク、継母岳のパノラマ

摩利支天山、火口縁のピーク、継母岳のパノラマ

しかし、歩けど歩けどなかなか山頂は近付いてくれない…。

森林限界を超えてもほぼ無風状態。これだけ暖かい日なのに山頂の手前はカリカリのままで、ちょっと苦労するところもありましたが、なんとかシールとクトーで山頂(剣ヶ峰の西側にある火口縁の小ピーク)に到着。でも、後から思えば途中でアイゼン歩行にした方が速かったかも。

火口縁の小ピークに到着

火口縁の小ピークに到着

いや~長かった。でも苦労して登った山頂は最高ですな。快晴無風で素晴らしい景色。

剣ヶ峰

剣ヶ峰

火口を挟んで向こう側の剣ヶ峰には、何人かの登山者の姿が。一方、こちらのピークには私ひとり。

もう 14 時を過ぎているので、剣ヶ峰までの往復はやめにしました。

乗鞍岳を遠望

乗鞍岳を遠望

さて、ようやくお楽しみの滑走ですが…、山頂直下の斜面はガリガリでした。まともにターンもできず、横滑りするとスキーが「ガッガッガッ」と振動してしまう…。

山頂の下の大斜面

山頂の下の大斜面

斜度が緩くなったところで、ようやくまともなターンが切れるようになりました。

シュプール

シュプール

とりあえず、雪の柔らかいところでヘッポコなシュプールを刻み付けておきます。

しかし今日の雪質は微妙です。同じ沢筋でも南側の日向斜面は緩み過ぎなくらい緩んでいるのに、北面側はガリガリのまま。

山頂と滑った斜面を振り返る

山頂と滑った斜面を振り返る

途中で登路とは少し外れた沢筋をしばらく滑走。

登路は右側の沢、滑降は左側の沢

登路は右側の沢、滑降は左側の沢

沢が合流した後は登路どおりに下りました。

標高 2100m 辺りから下は、ひどい悪雪になり、ほとんどターンができない始末。なり振り構わずボーゲンでなんとかコントロールしましたが、ボーゲンって足がすごく疲れるんだよね…。

この斜面を登って上俵山へ

この斜面を登って上俵山へ

上俵山へはシールを貼って登り返し。再びシールを剥がして兵衛谷の渡渉点まで滑り込むまで、ずっと悪雪に悪戦苦闘でした。も~疲れた~、ヘトヘト。

兵衛谷の渡渉は自分の往路どおりではなく、「もしかして、もうちょっと楽に渡渉できる場所があるのかも」と、ちょっと期待して、先行トレースについて行ってみましたが…これが大失敗。水量は多いし、流れは急だし…。他人様のトレースに、変な期待なんてしちゃいけませんね。私が自分で選んだ往路の渡渉点の方がよっぽどマシでした。

最後の小さな沢筋も、他人様のトレースを信じたばっかりに、無駄な苦労をするハメに。

ともあれ、明るいうちに渡渉を済ませることができて、ひと安心。後はシールを板に貼って少し登ると、往路よりも良いルートで林道のカーブ部分に合流。車まではすぐでした。やれやれ、山行終了が 18 時を過ぎちゃいました。うへぇ~、疲れた一日でした。

振り返ってみると、悪雪で散々だったのはしょうがないとして、ブーツが濡れて靴擦れに苦しんだのは大いなる誤算でした。っていうか、最初から渡渉があるって判っていたんだから、防水用にデカいポリ袋を持参するとかすりゃあ良かったのに…と、自分の準備の悪さを後悔するばかり。

前もって想像していたとおり、今回の尺ナンゾ谷はやっぱり玄人好みというか、かなりマゾっぽいルートだと思います。アプローチがやたらと長い割には、オープンバーンを滑れる距離は短く、尺ナンゾ谷そのものも沢筋の幅が狭いので。ただ、椹谷橋が完成したら、アプローチはだいぶん楽になりそうです。

もちろん濁河にも温泉があるので、せっかくなら入っておきたかったのですが、ひとまず帰路を急ぐことに。というのも、真っ暗になる前にクネクネ道をできるだけ通り抜けておきたかったのです。

国道 41 号線まで戻り、下呂市萩原の「飛騨川温泉・しみずの湯」に立ち寄り一日の汗を流して、ふーっと一息。

いやはや、今日はくたびれました。


これまでのコメント

  1. maoyuki より:

    みなつりさん こんにちは
    ブラボー!
    時間差はあれ、御嶽山頂から見たあのジェラートのようなピークに立っていたとは・・・
    尺ナンゾルート、来シーズンになったら連れて行ってください。

    • ryo より:

      こんばんは。ほんと、またまた同じ山だったとは。maoyuki さんが滑られた田ノ原ルートの沢筋、爽快だったでしょうね!

      そうですか~、剣ヶ峰からジェラートみたいに見えましたか。尺ナンゾ谷、なかなか渋いルートでした。来シーズンご一緒しましょう。来年はもしかすると、兵衛谷の立派な橋を渡れて、楽にアプローチできるかも。でも、その分マニアックさが減ってしまうかもしれませんね。

コメントをどうぞ

承認後に表示されます。しばらくお待ちください。

▲ このページの先頭へ