南アルプス縦走 2010年8月10日~16日(5日目)
南アルプス縦走の 5 日目。荒川小屋から三伏峠小屋まで到達し、今日も聖平での停滞による遅れをやっと挽回できました。
- 日付: 2010 年 8 月 14 日(土)
- 天気: 霧のち晴れ
- ルート: 荒川小屋~荒川前岳~高山裏避難小屋~板屋岳~小河内岳~三伏峠小屋(テント泊)
4 時半頃に起床。テントから外を覗くと・・・ありゃま、昨日は晴れていたのに、またガスっています。
今日も長いルートなのでラーメンとアルファ米でしっかりと腹を満たします。
6:00 荒川小屋
夜明けからガスガスでモチベーションどん底ですが、とりあえず出発します。
ここ数日の降雨があったため、途中の水場には十分な流水がありました。
ガスって景色は見えませんが、ジグザグの登りでは花が綺麗に咲いているのは眼の保養になります。でも花って明るい日差しを浴びてこそ、より美しい色に輝くってもんですよね。私はそう思うわけですが。
重荷に耐えて中岳方向との分岐のには 7:51 に登りつきました。確実に食料は減っているはずなのに、どういうわけかなかなかザックが軽くなる気がしません。
当然こんな天気では中岳方向へ立ち寄っても意味がないので、そのまま前岳へと進みます。
7:57 – 8:02 荒川前岳
分岐から少しの登りで荒川前岳に到着。
強風に煽られた霧雨が叩きつけるような状況なので長居は無用。山頂標のつまらない証拠写真を一枚撮って退散です。
山頂からの歩き出し初っぱなから戸惑ってしまいました。登山道をたどると左側の崩壊地の崖下に吸い込まれ消えているのです。どうやら東側に新しい踏み跡ができても次から次に崩れ落ちている場所のようです。通過中にバランスを崩すと危険なので、ここは要注意箇所ですね。
崩壊地の縁から離れるとカールの中の下りになるはずですが、ガスっていて周囲が全然判らないので、カールらしき地形が全然実感できません。延々続くガレ場の下りは足に堪えるものでした。
樹林帯に入ってもさらに下りが長々と。「下りだから飛ばせば速いんじゃないの」と甘く見ていましたが、昨日の疲れが残っていることや、登山道が濡れて滑りやすいせいもあり、コースタイムよりも遅れています。
水場の手前に、晴れて乾いていればどうってことはないでしょうが、ツルツルで危うい岩場が一箇所ありました。
荒川前岳から来るとこれが下りになるので要注意です。お助けロープもかけてありました。
地図にもある水場はしっかり流れていました。ここで水補給をしておきます。
10:25 – 10:47 高山裏避難小屋
やがてテントが見えてきて、ほどなく高山裏避難小屋に到着。予想よりもだいぶん時間かかってしまいました。
小屋前のベンチに腰掛けて休んでいると、小屋のオヤジさんがちょうど入り口から出てきたので、ご挨拶。
オヤジさん「稜線の上は風が凄かっただろ?」
私「かなりの強風で大変でしたよ」
オヤジさん「今日は三伏までいくのかい?」
私「ええ、そうです」
オヤジさん「そうか。ここからの稜線は風に吹き飛ばされたとしても、風下側のハイマツに倒れ込むだけだから危険はないよ。じゃ、気をつけてな」
と、ぶっきらぼうな口調ながらも親切に見送ってくれました。
それにしても、地味な縦走路に位置するだけあって、この小屋の奥地感というか渋さは南アルプス主脈で随一って感じがしますねえ。
ちょうど私が出発する頃に、オヤジさんも少し下った水場へ背負子を着けて水を汲みに行くところでした。
小屋の上の斜面は綺麗なお花畑になっていました。
12:00 – 12:12 板屋岳
樹林帯を歩くうちに板屋岳に到着。
ぜんぜんピークって感じがしないただの森の中です。東海パルプのでっかい標柱がなかったら絶対に判らないでしょう。
基本的にはずっと樹林帯の中ですが、時折ザレ地に飛び出て崩壊地の縁を歩くといったことを繰り返しているうちに、どこかで通過していたはずですが、山頂標もなく大日影山はどこだったのかは結局判らずじまいでした。
ところで、昨日辺りから大学ワンダーフォーゲル部パーティらしき集団と、たびたびすれ違うことが多くなってきました。「長期テント泊を存分に楽しむ」というワンゲル的視点で見れば、たぶん南アルプス全山縦走というのはたぶん国内でも随一のルートなので、ワンゲル部パーティが多いのも当然ですし不思議に思いません。
ただ、不思議というか興味深いのは、彼らがみな揃いも揃って南下していることです。私と同じく北上しているパーティとは、少なくとも今回の縦走中には一度も遭遇することは結局ありませんでした。
森林限界を超えてから小河内岳へと登る稜線は、晴れていれば爽快なんだろうなあと恨めしくもなります。
14:40 – 14:44 小河内岳
水と行動食を補給するだけで、すぐに山頂を後にしました。
小河内岳からは所々で西側へ崩落した縁を通過しますが、そのうちのひとつでは登山道が完全に崩れ去り、東側に新たに踏み跡ができている所がありました。このあたりの稜線は西側から崩れて徐々にやせ細っているようです。
朝からこれまでパラパラと弱い雨が降ったり止んだりの繰り返しだったのが、次第に雨脚が強くなってきました。「早く三伏峠に落ち着きたい」そればかり考えるようになりました。
16:21 烏帽子岳
やっと烏帽子岳に到着。三伏峠からここまでは 7 月に訪れたばかりなので、どんなルートかも既知です。
烏帽子岳の山頂からの下りに差し掛かると、いよいよひどい土砂降りになってしまいました。合羽を着ていてもそこかしこから水漏れしてきます。テントもシュラフカバーもマットも、ここ数日全く乾く暇もないという悲惨な状況なので、正直言うと三伏峠小屋に到着するまで、今晩は小屋に逃げこんでしまおうか、自分の中でかなり迷っていました。
小河内岳方面からの場合、実際のところ三伏沢で水を汲むのは一番面倒が少ないのですが、とにかくこう土砂降りでは早く小屋に着きたい・・・という一心だったので、水場へは立ち寄らず小屋へ直行しました。
「水は小屋で買ってしまおう」と小屋に依存してしまったわけですが、この辺は私の甘っちょろい根性丸出しってところです。
17:02 三伏峠小屋
小屋の受付でも最後の最後まで迷いましたが、結局テント泊にしました。水は「サントリー・南アルプス天然水」の 2L ボトル 600 円也を購入。しかし、よりによって本物の南アルプス山中で「この」ミネラルウォーターを購入するなんて・・・なんだか冗談みたいな話ですね。
その後すぐに雨が止んでくれたので、その隙に手早くテントを張れたのは幸いでした。
なんとか 2 日がかりで停滞による遅れを取り戻し、当初の計画通りに三伏峠まで届きましたが、2 日連続で長距離歩くとさすがに疲れました。
夕食を食べながら考えたのは明日以降のことです。三伏峠は最後のエスケープ可能地点です。明日以降も同じような天気ならば下山してしまおうか、そのまま縦走を継続するか・・・。
「止めるか続けるかは明日朝の天気を見て考えよう」と結論を先送りにして、この夜は眠りにつくことにしました。
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