- 日付: 2010年8月29日(日)
- 天気: 晴れ
- ルート: 第2高点~三ツ頭~甲斐駒ヶ岳~駒津峰~双子山~北沢峠
4 時にいったん目を覚ましたけれども、すぐに二度寝。テント越しでも眩しいほどの陽の光に再び目を覚ますと、太陽が姿を現しきった直後でした。あ~、日の出の瞬間を見逃したのが残念。
テントからわずか 10 秒(!)の山頂に急いで移動して、宝剣の傍らでしばし曙光に照らされた峰々の景色に見とれます。
うーむ、やっぱりここを宿に選んだのは大正解。なにせ起き抜けに 360度の素晴らしい眺望が楽しめるのですから。
第 2 高点の宝剣も朝日に照らされ鈍く輝いています。
下界ではあいかわらず酷い残暑が続く今年の夏ですが、山の上の空気はお盆頃よりはいくらか冷たく爽やかで、確実に秋が近づきつつあるのが感じられます。空気は昨日よりも澄んでいるようで、遠くの山まで綺麗に見通せました。
6:49 第 2 高点
お茶漬けで腹を満たして、いつになく 7 時前という遅い出発です。
鋸岳の核心部は昨日のうちに通過しておいたので、今日は気楽なものです。
ただし、第 2 高点から少し下った崩壊地では、信州側の熊ノ穴沢へ向けて垂直に切れ落ちていて、しかもその落差が凄まじいので少し緊張させられました。ここは縦走路中で一番の要注意箇所かもしれません。
中ノ川乗越へは急なガレ場の下りです。足を一歩運ぶたびにガレが崩れてきて、ひと苦労します。
ガレを下っていると反対側から 3 人パーティとすれ違いました。昨日の晩は六合目の岩小屋で泊まったとのこと。この方達 3 人以外は宿泊者はいなかったようです。
・・・ということは、このうちの 2 人は昨日の朝に戸台駐車場で会った方達・・・?どうも違うような気がするけど。
7:16 中ノ川乗越
下り着いた中ノ川乗越から下ってきた斜面を振り返ると凄い標高差です。一気に下ったなあという感じです。予想とはちょっと違ってガレとゴーロだらけでした。
狭い乗り越の底に、テントがやっと 1 つ張れるくらいのスペースがガレを整地して確保してありました。
登り返してすぐのザレた場所にも、もう 1 張り分のスペースがありました。ただしこちらは切り立った斜面の脇なので、ちょっと怖い感じがしますが。
険しい稜線は過ぎてこれから先は樹林帯の中ですが、それでも細かいアップダウンが繰り返し続くのは、さすが鋸岳といったところ。
稜線で初めて遭遇した道標は烏帽子岳への分岐です。烏帽子岳へと薄い踏み跡が延びているのが判りました。立ち寄ってみたい気もしますが、ちょっと時間に余裕がないので、今回はパスします。
ところでこの道標、行く手の踏み跡と「駒ヶ岳」と書かれた先の向きがズレています。おそらく旧ルート(三ツ頭の甲州側をトラバースする)を指しているのではないかと思われます。実際、旧ルートらしき踏み跡が薄っすらと残っているのが確認できました。手元の「山と高原地図」は 2010 年度版ですが、「頂上の北側を巻く」と書いてあり、情報が古いようです。今のルートは三ツ頭の山頂を通ります。
8:28 – 9:00 三ツ頭
分岐からはわずかに登れば三ツ頭の山頂に到着。ここで初めて長い休憩。
展望の良いピークで、来た道を振り返れば、第 1 高点、第 2 高点が一望でき、行く手には甲斐駒の巨体がいよいよデーンと迫ってきます。
仙丈ヶ岳も良い眺め。
単独行の方が追いついて来ました。角兵衛のコルから今朝出発したそうです。
次第に花崗岩が風化した白い砂の混じる場所が稜線上に所々に現れ始め、いよいよ甲斐駒に近づいてきたな、という雰囲気になってきます。
9:25 – 9:35 六合目小屋
やがて、白砂の平坦なザレ地にやって来ると、「明治四十一年」などと書かれた古い石碑が並んでいます。その昔、甲斐駒を宗教登山した講の人々によって建てられたもののようです。
ザレ地を過ぎると、ほどなく六合目の岩小屋に到着しました。
小屋の古い写真を見るとボロボロでしたが、今は新しい屋根がかぶせられてすっかり改装されています。中を覗いてみると整地された土間と綺麗な板の間があり、これなら快適に過ごせそうです。
小屋の近くには水場があるはずです。水は昨日 5 L 汲んでおいて、十分余裕はあるのですが、念のためここで足しておこうと思ったのですが・・・水場の標識も見あたりません。ここまでほぼ同時にやってきた単独行の方も「水が心もとないからなあ・・・」と汲みたそうにしていましたが、結局水場がどこか判りませんでした。帰宅してから調べてみると、実は水場は手前で通り過ぎた石碑のあるザレ地から信州側に少し下った所にあるようです。
岩小屋を出発すると、森林限界を超えていよいよ岩稜です。
単独の方は先に岩小屋から出発していましたが、途中で追い越しました。
甲斐駒まで約 400 m の登りがずっと続きますが、登り勾配もほどほどで、登るほどに美しい甲斐駒の山頂が近くに迫り来る・・・こういう登りなら楽しいものです。鎖が架かる急な岩場が途中にありますが、それも良いスパイスです。
11:05 – 11:48 甲斐駒ヶ岳
久しぶりの山頂です。ほぼ 7 年前に黒戸尾根から登った時以来です。
これまでの稜線とはまるで別世界のように、甲斐駒の山頂は何十人もの登山者で大賑わいです。
甲斐駒とはまったく雰囲気が違う鋸岳の険しく赤い稜線を振り返って眺めながら、のんびり長い休憩としました。そろそろガスが上がり始めていますが、北岳や仙丈ヶ岳、アサヨ峰や地蔵岳のオベリスク、遠くには八ヶ岳の姿など、山頂の巨岩の上によじ登ってパノラマを楽しみました。
やがて、さきほどの単独の方も登頂。お互いにお疲れ様と健闘をたたえ合いました。
前回は行かなかった摩利支点に立ち寄りたいので、下山は巻き道ルートをとりました。
白く美しい砂地の斜面は、いかにも甲斐駒らしい雰囲気ですね。
分岐にザックをデポして、摩利支点まで往復。摩利支点から眺めた甲斐駒の姿は一見の価値ありです。
分岐に戻ってザックを回収。前回は仙水峠経由でしたが、今回は双児山のルートで下山することにしました。
13:16 – 13:25 駒津峰
駒津峰から大きく下る途中の景色は開放感にあふれてなかなかのものです。
でも、大きく下るってことは・・・また双児山へ登り返しがあるわけです。さすがにちょっと疲れてきました。
双子山には立ち止まらずに通過。あとは樹林帯をダッシュして一気に下るだけ。
14:42 北沢峠
到着すると、ちょうど下りのバスが発車しようとするところでしたが、満員だったの一本遅い便を待つことにしました。幸い今日はバンバン増発便を出しているので、次までそう待つこともなさそう。
次のバスはすぐにやって来て、15 時頃には北沢峠を出発。助手席に座っていると、アマチュア無線好きの運転手さんが話しかけてきました。どうやら、私のヘルメットに書いてあるコールサインに興味を持ったようです。
途中の鋸岳の眺めが良い場所で運転手さんがバスを停めてくれて、「あそこに見上げるのが鹿窓」と、乗客に解説してくれました。
車窓から鋸の稜線を見上げると、タイミングよく綺麗にガスが晴れていて、そのギザギザの険しい形がよく判りました。ああ、あそこを歩いたんだなあ。
大橋でバスを下車。ここにザックを置いて空荷で駐車場へ車を回収に向かいます。
駐車場に戻ってみると、私の車の横の日陰に 2 人の方々が座り込んでいるので、どうしたのかと思ったら、待合小屋が閉鎖されていて、日陰になるものが他になかったようです。せっかく立派な待合小屋があるのだから、登山者に自由に使えるように解放してくれれば良いのに。
結局、タクシーを待ちきれないということで、2 人を仙流荘まで乗せてあげました。
さて、仙流荘に到着。やっと汗を流してすっきりできます。
日帰り入浴者用の駐車場から振り返ると、ちょうど鋸岳の姿だけが戸台川の谷間を通して見えました。心憎い演出ですねえ、ギザギザな稜線を眺めながら縦走を振り返ってみました。
数年越しの課題だった鋸岳、今回は晴天のもと気持ち良く縦走できました。核心部を通過してみた所感は、「もはやバリエーションルートと呼ぶには物足りない」といったところですが、岩稜帯は変化に富んでいるし、人があまりいない静けさも楽しめる好ルートでした。次に縦走するときは、鹿窓をくぐらずに、稜線どおしで第 3 高点を通過して大ギャップを懸垂下降しようか…と、また課題が増えてしまいましたね。
もうすぐ1年になりますが、この記事を下山後に見ていたのですが以降検索してもヒットせず行方不明になってそのままになっていました。
中ノ川乗越でお会いしました、記事にある3人の中の1人です。(シルバーのメット)私の写真の日付は乗越7:01になっておいました。2人は戸台からのパーティーでザイルワーク完璧なエキスパートでした。私はソロでした。その後小ギャップの鎖で宙吊りになってしまい危うく滑落するところでした。右手を負傷してしまいましたが、釜無川を下り、二百、三百名山やっている神戸の方の車で竹宇駒ケ岳神社まで送ってもらいました。
この山行の経験もあり、無事9月の連休に西穂奥穂縦走を踏破できました。
石室で一緒だったお二人にもお会いしたいものです。
この山行で光岳から釜無川ゲートまで南アルプスが繋がりました。あとは深南部の信濃俣、大無間を繋ぐルートに挑戦しようと準備中です。目指すは、糸魚川御前崎の踏破です。まだまだですが。。。
yao さん、
もうそろそろ1年ですね。中ノ川乗越ですれ違ったこと、私も覚えていますよ。竹宇駒ヶ岳神社に戻ったということは、黒戸尾根を登られたんですね。2000mガッツリ登って鋸まで縦走されたとはご立派です。小ギャップでお怪我をされて大変でしたが、お疲れ様でした。
実は私も本州横断ルートをつなげようと、挑戦していたことがありました。一部未踏のまま、放ったらかしにしていますが(笑)。私は富士山~奥秩父を経て北アルプスというルートでしたが、やっぱり yao さんのように南アルプスを通るのが王道ですよね。ご成功をお祈りします。