- 日付: 2010 年 7 月 31 日(土)
- 天気: 曇り、朝のうち時々晴れ
- ルート: 夜叉神峠~薬師岳~観音岳~鳳凰小屋
鳳凰三山は私にとって思い出深い山です。初めての山中泊と初めてのテント泊を同時に経験した場所で、しかも快晴の空の下、白砂の稜線から眺めた北岳の雄大さは強烈でした。あのイメージのおかげで北岳に魅せられ、実際これまでに何度も北岳に登っているわけです。最初の体験が良かっただけに、それがキッカケとなって今でもこうやっていろいろな山との付き合いを続けているような気がします。
さて、今回のルートはどうしましょう。標高約 1400m の夜叉神峠から入るか、約 2000m の北沢峠から入るか。結局キツい方を選びました。
幕営するのは南御室小屋か?鳳凰小屋か?南御室小屋に到着した時刻でどうするか決めることにしました。もちろん、南御室小屋に幕営する場合は、北沢峠までの縦走は諦める前提で。
30 日夜の出発は遅くなり、夜叉神駐車場に車で到着したのは 3 時頃。すぐに車中で仮眠に入りました。
車の外のワイワイ騒がしい声で起きてみると、まだ 5 時前。結局ほとんど眠れませんでした。
夜叉神ゲートが開くのを待つタクシーやらバスやらが長蛇の列になっていて、大勢の登山客でごった返しています。
もともとは、もう少し遅い時間に起きてゆっくり出発でも良いかなと思っていたけれど、これだけ騒がしいのではおちおち眠ってもいられません。そんなわけで準備を始めて、6 時過ぎには鳳凰三山の縦走路へと足を踏み入れました。
6:15 夜叉神駐車場
寝不足で少しフラフラする感じですが、登りはじめからいきなりの急登にもかかわらず、案外足取りは軽い感じ。
7:15 – 7:27 夜叉神峠
ちょうど 1 時間で夜叉神峠小屋に到着。
出発したときにはどんより曇っていましたが、少し日が差すようになりました。でも、残念ながら白峰三山は雲に覆われて姿が見えません。
小休止の後に出発。
夜叉神峠までで十分ウォーミングアップできたようで、ここからは良いペースで進めて、杖立峠の道標まで約 1 時間。
本当の杖立峠は道標から少し下った所で、それからはなだらかな登りに。白峰三山は途中でちょっとだけ木々の間から見えましたが、残念ながらその一瞬だけでした。
その後、展望台としてはうってつけの開けた場所もありましたが、やはり雲に隠れて景色はいまひとつ。
峠から苺平まで約 1 時間でした。
9:30 – 9:42 苺平
苺平で休んでいる間、単独のテント泊の方と少しお話を。南御室小屋までにするか鳳凰小屋まで足を延ばすか考え中とのこと。
苺平からはかなり標高を下げます。こんなに標高差あったかな・・・、なにしろ前回は 8 年前なので記憶もあやふや。
10:07 – 10:37 南御室小屋
南御室小屋の入り口には「薬師岳小屋は本日満員の為予約のある方以外宿泊できません」との看板が。
南御室小屋のことはだいたい覚えていましたが、記憶よりも広く感じました。
テント場はどこかの高校(というわりにはやけに幼い顔も混ざっていたけれど・・・)の山岳部らしき集団で大賑わいです。
そうそう、ここの小屋で楽しみにしていたことがあるのです。8 年前にここの水場で飲んだ水のあまりに美味しかったこと・・・。ぜひここでたっぷり水を飲みたかったのです。
さて、小屋の前を通り過ぎて・・・右手奥に行くと・・・
小屋の壁には「南アルプスの天然水 すぐそこ」という看板が。
ありましたありました、水場です。
さっそく飲んでみると・・・やっぱり素晴らしい味で記憶どおり。キンキンに冷えていて、頭が痛くなるほどです。足枷になるのは承知のうえで、この美味しい水を 5 L 汲んで持ち上げることにしました。
苺平で話した方は、テントを張り始めていました。今日はここに落ち着くようです。
後からやって来た方が小屋のスタッフに「薬師岳小屋には泊まれる?」と聞いています。しかし入り口の看板どおりに薬師岳小屋は満員とのこと。一方で南御室はガラガラだそうです。場所が良いだけに薬師小屋には人が集中するでしょうね。それに定員も少ないようですし。
小屋前のテーブルで休んでいると、少しの間は青空が見えていましたが、次第に霧がかかり始めました。これじゃこれからもあんまり景色は楽しめそうもないかな・・・。
私のザックにはかわいい蝶々が警戒心もなくまとわり付いていました。
まだ早い時間なので、私は鳳凰小屋まで足を延ばすことに決めました。
樹林帯を 1 時間弱ほど登ると、森林限界を抜け出て稜線に登り上げました。白砂の稜線にポッと飛び出たという感じで、爽快感が味わえる瞬間です。
巨岩の上に立っていると、はじめは砂払岳越しに薬師岳が見えていたのですが、すぐにガスに覆われて隠れてしまいました。
休憩していると、さっき南御室小屋で薬師岳小屋に泊まれるか聞いていた方が、自分のは圏外だから、私の携帯を貸して欲しいと言ってきます。鳳凰小屋に予約を入れたいとのこと。幸い鳳凰小屋に通話して空きが確認できたので、今夜の宿は無事に確保されたようです。
ここからはいかにも鳳凰三山らしい白砂の稜線歩き。ガスって景色はロクに見えないけれど、この稜線を歩いて花崗岩の巨岩群を見るだけで、十分楽しい気分になれます。
砂払岳から少し下って樹林帯の中の薬師岳小屋を通過。この小屋はもっと開けた場所にあるイメージだったのですが・・・記憶なんていい加減なもんですね。
12:10 – 12:39 薬師岳
少し登り返すとすぐに広く平坦な薬師岳の山頂に到着。
こんなに広い山頂だったかなあ・・・やっぱり記憶があやふや。
巨岩の上に登ってしばし休憩です。あいかわらずガスは取れず白峰三山の姿は見えませんが、ここの巨岩群の眺めだけでもなかなか楽しいものです。
携帯を貸してあげた方は、ここまでほぼ同じペースでやって来ましたが、私がのんびりしているうちに先に行ってしまいました。
薬師岳からはほぼ水平の稜線歩き。晴れていればさらに爽快だっただろうなあ、残念。
13:08 – 13:15 観音岳
三山の最高峰のわりに、観音岳の山頂は一番地味な印象です。
他の二山は巨岩群というデコレーションがあるのに較べて、観音岳は稜線状のただのピークという感じで。
ま、景色が見えればもっと印象は違うのでしょうが。事実、快晴だった 8 年前は、こんなに地味な感じではなかった気がします。
観音岳から下っていると、途中でガスが徐々に晴れてきて、オベリスクを頂いた印象的な姿の地蔵岳が目の前に見えて始めました。
曇り空ならではのこんな幻想的な姿も、なかなか良いものです。
鳳凰小屋の分岐までやってくると、ポツポツと雨粒が落ちてきました。夕立のようです。
水も沢山持っているし、小屋まで下って明朝また登り返すのも面倒だし、今すぐこのままここでテントを張れば雨もしのげるなあ・・・と悪魔のささやきが。しかし、小屋の目と鼻の先で「闇テン」ってのもさすがにマズいでしょうなあ。
地蔵岳は明日朝の楽しみに取っておくこととして、分岐からショートカット道で小屋まで下ります。
次第に本降りになってきましたが、分岐から下は樹林帯なのでさほど雨に濡れることもなく、小屋に着いた頃には雨もすっかり止みました。
14:19 鳳凰小屋
夜叉神を出発してちょうど 8 時間。なかなか今日は良いペースでした。人の声でたたき起こされたような今朝でしたが、そのおかげで早出できて鳳凰小屋まで足を延ばせたので、結果的に正解だったと言えます。
幕営の受付をすませて、テント場へ。幸いまだ張り数は少なく好きなようにテントを張れました。綺麗に白砂を整地した快適なテント場で、張り綱の固定に石を使うのは禁止とのこと。私はいつも石を使うばかりで、ペグは持たないので、「しまったなあ~」と思いましたが、まあ、雨さえ降らなければフライが本体にくっついてもたいした問題じゃないので、気にしない気にしない。ということで今夜はだら~んと脱力幕営・・・。
南御室から水を汲んできたのは、8 年前にここの水は温くてあまり美味くなかった気がしたせいもあるのですが、改めて今回飲んでみると・・・キンキンに冷えて美味かった。わざわざ重たい思いをして担ぎ上げる必要もなかったなあ。
テントを張ってのんびりしてから夕食です。この日は冷たい素麺を楽しみました。
食事をしていると、次々にテント場に人がやってきます。
日が暮れる頃には足の踏み場もないほどのテント村になってしまいました。それに較べて小屋の方はガラガラだったようです。
明日は地蔵岳へ登って早川尾根への縦走。早めに眠りにつきました。
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